『循環器疾患における緩和ケアについての提言』が日本循環器学会より発行されてますが、なかなかガイドラインを読み通すのは時間を取られてしまいます。何回かに分けて自分なりにかみ砕いて表現しようかと思います。あくまで私のノートなのでガイドライン原本をご参照ご利用下さい。
第1章 総論 : 1.全人的苦痛の評価と緩和ケアの重要性
2016年は年間約130万人が死亡し15%が心疾患
循環器疾患でも全人的苦痛の評価は重要
エンドオブライフケアと緩和ケアは概ね同じだが、緩和ケアの方がやや範囲が広く、死が不可避かどうか分からない状態の患者へのケアを含む。救急集中治療や感染症など。
Lynn らが提唱した病の軌跡(illness trajectory):4パターンあり、突然死、癌(急激な悪化、月単位)、臓器不全(肝硬変、COPD、心不全末期、寛解増悪を繰り返す、年単位だが最後は急激に低下)、フレイル(認知症、数年以上の単位)。→改善可能な変化なのかの判断が難しい。
緩和ケアは予後がどうかではなく、ニーズがあるかどうかで必要かどうかが決まる側面がある。しかし循環器、集中治療領域における緩和ケア導入の評価には課題が残っている(表3参照)。海外では Needs Assessment Tool: Progressive Disease-Heart Failure(NAT: PD-HF)が開発されている。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.caresearch.com.au/Portals/20/Documents/Health-Professionals/NeedsAssessmentTool-ProgressiveDiseaseCHeRP.pdf
第1章 総論: 2. ACPと事前指示のあり方
事前指示:意思決定が出来なくなったときに「生命維持装置などをどうしたいか事前に指示しておくこと(リビング・ウィル)」+「代理意思決定者を表明しておくこと」
DNAR:心停止時に蘇生しないという医師の指示。
ACPはそもそもこういったことを話し合うプロセスや価値観の共有であり事前指示と違う
狭義のACP:意思決定能力が低下したときに備える話し合い
広義のACP:意思決定能力低下しない将来も含めた話し合い。こちらをACPと定義して話は進む。
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」や「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」も参考にする
ACPの効用:「患者の自己コントロール感が高まる」、「抑うつや不安をもつ患者の割合が減少する」、「患者の意向が尊重されたケアが実践され,患者と家族の満足度が向上し,遺族の不安や抑うつが減少する」
ACP の害:「自分の終末期について具体的に考える」心の準備ができていないと利益よりも害が多いこと,希望を失ってしまうことがあること
ACPを行うかどうかのスクリーニング:サプライズ・クエスチョンが知られ、「この患者が 1 年以内に亡くなったら驚くか」と医師が自問自答し,「驚かない」場合には行う方法がある。
ACPのやり方:表4と、その解説文に例文あり
第1章 総論: 3.予後予測モデル
循環器は癌と比較して予後予測が難しい。しかし、治療方針の判断、ACPにあたっては必要な情報である。
急性冠症候群:GRACEスコア。入院中および 6 ヵ月後までに予測される死亡率または心筋梗塞発症率が算出される。(下記画像:『循環器疾患における緩和ケアについての提言』より転載)
急性心不全:OPTIMIZE-HFリスクスコア。GWTG-HFリスクスコア。
慢性心不全:SHFM(Seattle Heart Failure Model)(下記画像:『循環器疾患における緩和ケアについての提言』より転載)。
MAGGIC(Meta-analysis Global Group in Chronic Heart Failure)予後モデル。
MAGGICモデルはSHFMよりもシンプルだが死亡率がやや高く産出される。
サプライズ・クエスチョンは予後予測尺度ではないが、患者の治療にあたる医師が自分自身に「この患者が 1 年後に亡く なったら私は驚くだろうか?」と問いかけることで、緩和ケアに重点を置くべきタイミングを計る手法。ACPの導入タイミングを検討するのに用いる。
上記の予後予測モデルは不十分であり、定期的に繰り返し評価することが推奨されている。また、欧米人データに基づいており、日本では死亡率が1.5~2倍に過大評価されることが明らかになっている。
第1章 総論: 4.コミュニケーション
(省略)